第2章 みんなのいない朝
「主、報告書を持ってきた」
「ファッ!?」
不意を突かれ、思わず奇声で返してしまう。声の方を振り返ると、鶯丸だった。
鶯丸――彼だけは、“いつもの鶯丸”である。
そんな、ある意味馬鹿げた感覚を覚えていた。
朝の広間でも、鶯丸だけがつくりものでない表情をしていた。
どうしてそう思ったのかは、自分でもよくわからない。
報告書をわたすと、鶯丸はすぐ自室の方へ戻っていった。
呼び止めるのがためらわれ、ただ見送る。
一期たちは、いつの間にかいなくなっていた。
出陣メンバーを呼びだして「様子がへんだがどうかした?」と話を聞こうとも考えたが、廊下で獅子王を見かけたとき「やめよう(確信)」となった。
獅子王は私を見るなり、顔からサーッと血色が引いていき、踵を返したのだ。
清々しいまでの避けられっぷりに、マジで涙出る5秒前である。
そういえばいつもなら、誰かしら審神者部屋に邪魔しにくる時間だ。
男士たちが騒がしく部屋を荒らしているそばで、政府への提出書類に追われる。それが日課だった。
けれど、部屋の中も外もただただ静かで、のったりとした時間が這っているだけだった。