第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核
「あのお茶、きっと私を“つくりかえる”ためのものでしょう。だから途中から私に飲ませなくした。茶葉ごと隠してまで」
「……」
“鶯丸”の瞳が、一瞬動揺したように揺れる。
身体的な疲労、霊力の枯渇感、そういったものが、彼が勧めてくれたお茶を飲むと嘘のようにおさまった。
でも、記憶がぼんやりし始めたのも、お茶を飲み始めたのと同じ頃だった。
だから、あれは痛みを癒すものなんかじゃない。痛みを麻痺させて、痛みを感じる機構そのものを壊してしまうような、そんなものじゃないかと今は思う。
だって私は、今剣の悲しそうな笑顔も、骨喰を抱きしめたとき温かさも、獅子王の手の冷たさも、みんなみんな忘れてしまっていたから。
そうだとしたら、一連のことに納得がいく。湯のみをはたいたのも、そのときの彼の表情も。
機械越しにまくし立てられた、耳にこびりついて離れない、あの言葉。
『審神者に従順な兵器の再生成――リサイクル――だ』
それがどういう意味なのか、彼らがこの本丸の男士たちになにをしたのかは、わからない。
でも、絶対によくないことだということはわかる。
「獅子王だって、あれは、介錯だったんじゃないの……?」
“鶯丸”に呼ばれ、獅子王のもとに駆け付けとき、おそらく既に獅子王は手遅れだった。どれだけ霊力を注ぎこんでも、全部すり抜けてしまった。
苦し気に浅く呼吸する獅子王の髪飾りに、刃を突き立てた“鶯丸”は、一見獅子王にとどめを刺したように思えた。
だけど、たぶん、違う。
思い返せば、あのときの彼は、悔し気で、それでいて悼むように唇を噛んでいた。
「鶯丸、あなたは私のこともほかの男士のこともそうやって助けようとした。さっき実験場と言っていたけど、きっとあなたは実験を観察する側なんだね」
「……」
「だからかな、あなただけは違った気がしたけど、そうじゃなかった。
、、、、、、、、
やっぱり、ここは私の本丸じゃない。」