第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核
「大丈夫だ。介助するのは慣れている」
“鶯丸”がにこやかに笑んだ。親しげな笑みのはずが、胸の奥に氷の針が突き刺さるような冷たさを感じる。
胸がざわざわして、ただ恐ろしい。
どうして笑って、慣れている、なんて言うの。
一体誰で、なぜ、慣れているの……?
「というわけで、残された時間を有意義に過ごした方がいいと思うが……」
「ここから出る」
鶯丸が、はっきりと断言した。なんらかの確信を持った声だった。私を支える手に、さらに力が入る。
チャキ、とわずかに金属が動く涼やかな音がした。刀を構えた鶯丸は、微動だにしない瞳で“鶯丸”を視界に捉える。
一方“鶯丸”は、一切の笑みを崩さないまま。むしろ、微かにそれを深くして、
「そもそも、まずここからは出られない。出るには、俺を折らなければならない」
数学の公式を暗唱するような、決まりきった口上を述べるような。なめらかだが、どこか無機質に彼は言った。
言いながら、清流が流れるようなすべらかさで、鞘から刀が抜かれる。
「ここの結界の核は、俺だ」
そう婉然と笑んで、真っ直ぐ切っ先を突き付けた。