第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核
表情を崩さないまま、悠然と“鶯丸”が言った。
「一度ネットワークに繋がれると、霊力のコントロールはネットワークに奪われる」
「……俺の主になにをした?」
わけがわからず閉口する私のかわりに、鶯丸が聞き返す。“鶯丸”は肩をすくめて答える。
「たとえば、誰かが彼女の霊力を急速に枯渇させて、衰弱死させることもできるようになった、てことさ」
恐ろしいことを聞くそばで、右半身に違和感を覚えた。視界が霞がかり、つま先がじりじりと痺れている。
身体の中を鶴丸の霊力が巡っているのを感じるが、それが原因ではない。むしろ――
「それ以前に、鶴丸のジャミングが解けたら、彼女は彼女でなくなる」
「……どういう意味だ」
「彼女は今もつくりかえられている」
二人の鶯丸が話すかたわら、突然ガクリと視点が落下した。地面と同じ高さになる前に、腰にあたたかな手が回る。
「主!?」
狼狽する鶯丸の顔の右側が、よく見えない。
というより、視界が狭い。右足の膝から下の感覚がぼんやりしていた。自分の足で立っていないだろうことはわかる。左の足の裏は地面を踏みしめているが、右の足の裏は何も感じない。
鶯丸は、そんな私をお姫さまだっこの直前の体勢で支えていた。そうでなければ、私は右側に倒れこんでいたらしい。
「思ったより鶴丸が善戦しているな。使えなくなったのは右目と右足だけか?」
「え……」
まばたきしても、違和感があった。ひりつくような戦慄を覚え、左目だけを閉じる。
予感は的中した。
世界が真っ暗だった。