第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核
機械の呼びかけで、そこらじゅうから殺気がした。
ここに居続けるのはまずい。安定のようにまた、誰がいつ斬りかかってきてもおかしくない。
だというのに、鶯丸は私に向き直り、
「怪我はないか!?」
「う、うん! 大丈夫だよ」
こんな鬼気迫る表情、見たことあっただろうか。
いつもより確実に瞳が大きく見開いているし、距離が近い。睫毛、長いな。――じゃなくて!
な、なんだか様子がおかしくない!? と思っていると、
「わぶっ!?」
突然上半身が圧迫される。肺がぎゅうっと潰され、空気とともに奇声となって飛び出た。首も締まっている。上半身全体がちょっと痛いくらいだけれど、とても暖かい。
鶯丸に、抱きしめられていた。
「…………主」
確かめるように呼ぶ声が絞り出される。
聞き間違うわけもなく、それは鶯丸の声だった。
今にも泣き出しそうな、迷子の幼子がやっと親と再会したような、そんな声だ。
聞いたこともない至近距離だからか。彼の声が身体の芯にまで響き、そのまま溶け込んでいく。あとにはやわらかな沈黙だけが残った。
どうしたらいいかわからず、私は鶯丸の背中に手を回す。
自らの無事を報せようと、その背中をぽんぽんしてみる。どうしたんだろう? さっき会ったばかりなのに――
「感動の再会、か」
「――っ!」
声にすぐさま反応し、鶯丸が私を庇うように前に出る。刀を構え、見据える先は――“鶯丸”だ。
「……え?」
わけがわからず、思わずまぬけな声がもれる。私の前に立つ鶯丸と、後方から現れた“鶯丸”。
二人を交互に見る。
どうして二人……?
“鶯丸”はゆっくりと歩み寄ってくる。すらりと伸びた足が、ざり、と土を踏んだ。飄々とした面構えは、何を考えているのかを誰にも読み取らせない。私を庇う鶯丸が、目を細めて目付きを鋭くさせた。全身から警戒を滲ませている。
「この実験場を抜け出したとして、彼女はもうすぐ死ぬ」