第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核
「遅かったか……」
それは、こんのすけと呼ばれるものによく似ていた。
しかし、灰色の外装に、中央に赤い光点を宿すレンズの如き瞳は、私が知る“こんのすけ”ではない。
「刀剣七四三に乖離が発生。症状、霊性消失。分類、イのイ。即時の特定回収措置を実施」
機械的な口調で、しかし人間の声で、そいつが言った。特定回収措置、それに聞き覚えがある。政府から役人が来て、今剣を持っていった。これは、審神者すら手入れできない刀剣を保護するものだ、とか言って。
こんのすけが口を開けると、そこから青白い光が漏れだした。光は次第に図形や文字となり、術式を形づくる。その術式の中央には一振りの太刀、鶴丸がいた。
前回は、術がかかった箱に今剣を収めていたが、今回は野ざらしの術式なのか。
私は咄嗟に鶴丸を掴み取り、後ろに飛びずさる。
“こんのすけ”が、機械が首を駆動させるように、カクンと頭を上げて私を見上げた。感情のない、月光すら反射しないビー玉の中心には、赤い光点がいた。
その銃の照準が、私を射し貫く。
「お前、こんのすけじゃないでしょ……!?」
「……」
「鶴丸は持っていかせない! なにが起きてるのか説明して!」
今剣のときも、ろくな説明がなかった。その後どうなったのかも報せがない。
というより、私は今剣を忘れていた。鶴丸に霊力を注がれる、その直前まで。
そいつは、はぁー、と心底鬱陶しそうにため息をついた。無表情な機械からそんな声が出てくるものだから、いっそう不気味だった。
「これは戦争なんだ。我々は存在を脅かされている。だから何がなんでも勝たなくちゃならない。そのために必要なことは何か?」
まるで、できの悪い生徒を諭すような口調だった。
こんのすけを介して、誰かが喋っている。でもそれが誰なのか、全く聞き覚えがない。