第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核
ぼーっとしていたら気づかないくらいの冷たさ。それが鶴丸の落ち着いた声とまざって、急速に全身を浸していく。
鶴丸の霊力を異質なものと認識したのか、平衡感覚が異常を報せてきた。縦と横があやふやになり、頭は重く、おまけに視界の端でぱちぱちと火花がスパークしている。
頭の中で誰かが怒っている。
彼を止めろと、私にがなりたてる。
「鶴……ま――離し――」
脳髄の端で、ズキンとなにかが脈動した。
瞬間、“声”が洪水になって、頭いっぱいに溢れだす。
『それじゃあるじさま、あのはおりをかしてくれませんか?』
『どこにも行かないでくれ』
『もういいんだ……ありがとな』
思い出す。
今剣を。
骨喰を。
獅子王を。
私の目の前で消えてしまった、三振りのことを。
「……っあ……」
やっぱり、初めてじゃなかった。
思い出した。
急にみんなが冷たくなったことも。
わけがわからないまま今剣たちを失ったことも。
――鶴丸とこんなふうに談笑するのが、本当に久しぶりなことも。
「なんで、私……」
「あいつらがきみを恨んじゃいないってことも、思い出したか?」
穏やかな表情のまま、どこか諭すように鶴丸が言った。こんな、普通な鶴丸は久しぶりだ。なのに、怖くて仕方がなかった。だって鶴丸は、あのときの三振りと同じ目をしているから――
「最初からきみの元に来れていたらなぁ」
鶴丸は、泣き笑いのような、そんな表情を見せた。白い月明かりの下、胸がぎゅっとつぶれてしまいそうな儚げな微笑。全てを諦め、それでいて受け入れたような。
彼が何を言っているのかわからない。わからないけれど、それは別れの挨拶の一部のようで、
「きみの鶴丸によろしくな」