• テキストサイズ

【刀剣乱舞】ラプラスの演算子

第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核


----------------------------------



「主、手を握ってもいいか?」

 唐突な言葉だった。

 囁くような声で問うてくる姿に、戸惑いではなく、言いようのない不安が頭をもたげてくる。眉をやわらかく下げた閑かな表情が、いっそう儚げに映った。

 ――この感覚、まただ。

 おかしなデジャヴが視界をぐらぐらさせる。せりあがってくる衝動のまま、私は鶴丸の手首を掴んでいた。

「行っちゃだめ」

 どうしてそんな言葉が飛び出したのか、自分でもわからなかった。

 鶴丸は驚いたように目を少し見開いたあと、再び穏やかな表情に戻って、目をゆるく細める。

「すまないが、それは聞けそうにないな」

 鶴丸は私の手を優しくほどくと、改めて私の手にその手を重ねた。

 指は細く、骨ばっていた。けれども私の手をしっかり掴んでいて、ちょっとやそっとの力じゃ振りほどけなさそうだった。

 私の指先を包み込む鶴丸の手のひらは、ほんのり冷たい。その冷たさが、血管を、神経を通って、指先から腕へとのぼっていく感覚を覚える。



 これは、霊力を流し込まれるときの感覚――




「許したわけでも、絆されたわけでもないつもり、なんだが」

「……鶴丸?」

「きみをきみのままでいさせることが、何よりも“仕返し”になると思ったんだ」

/ 223ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp