第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核
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「主、手を握ってもいいか?」
唐突な言葉だった。
囁くような声で問うてくる姿に、戸惑いではなく、言いようのない不安が頭をもたげてくる。眉をやわらかく下げた閑かな表情が、いっそう儚げに映った。
――この感覚、まただ。
おかしなデジャヴが視界をぐらぐらさせる。せりあがってくる衝動のまま、私は鶴丸の手首を掴んでいた。
「行っちゃだめ」
どうしてそんな言葉が飛び出したのか、自分でもわからなかった。
鶴丸は驚いたように目を少し見開いたあと、再び穏やかな表情に戻って、目をゆるく細める。
「すまないが、それは聞けそうにないな」
鶴丸は私の手を優しくほどくと、改めて私の手にその手を重ねた。
指は細く、骨ばっていた。けれども私の手をしっかり掴んでいて、ちょっとやそっとの力じゃ振りほどけなさそうだった。
私の指先を包み込む鶴丸の手のひらは、ほんのり冷たい。その冷たさが、血管を、神経を通って、指先から腕へとのぼっていく感覚を覚える。
これは、霊力を流し込まれるときの感覚――
「許したわけでも、絆されたわけでもないつもり、なんだが」
「……鶴丸?」
「きみをきみのままでいさせることが、何よりも“仕返し”になると思ったんだ」