第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核
こんな真夜中に誰かに話しかけられるのは初めてだ。
なのに、妙な感覚に陥っていた。
同じように誰かに話しかけられたことが、何度かあった気がするのだ。いや、そんなわけはない。夜はぐっすり眠っていたし、夜にしなければならない仕事もない。昨日もそうだったはず。
……昨日のことを思い出そうとするが、記憶はあいまいだった。昨日どころか、それ以前の記憶もぼんやりとしている。体調が悪くてうまく思い出せないのか。霧がかった白い森の中にいるみたいだった。
「起こしてしまったかい?」
「ううん、起きてたよ」
「良かった。夜遅くにすまん、入ってもいいか?」
「あ――うん、いいよ」
一瞬言葉に詰まりそうになったが、快諾を返す。
襖が静かに引かれ、白い顔が現れた。逆光を受けて、色素の薄い髪の毛がさらに透けるように光っている。私の姿を認めると、鶴丸は小さく首を傾げた。
「眠れないのかい?」
「うん、ちょっとね」
「なら眠れるまで俺に構うといいぜ」
「え、なに、急にどうしたの?」
「嫌なのか?」
「いや、そうじゃないけど……」
「そーだろうそーだろう! 構いたくなってきただろう!」