第14章 ゲームチェンジャーと玻璃の核
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体がだるい。
頭の中がぐちゃぐちゃと整理されず、ずっと寝起きみたいだ。ふらつく四肢は、霊力を使いすぎた研修の翌日を思い出した。
だというのに、眠れない。眠ってはいけないと、誰かが頭の中で必死に叫んでいる。枕元の時計を見れば、針は深夜2時を過ぎていた。
寝ないと。明日も仕事がある。日課をこなさないといけないし、報告書もたまっていたはずだ。
あのお茶を飲まなかったことが原因だろうか。この急な体調不良は、禁断症状じみたそれなのか。
あのあとキッチンの棚を確認したが、茶葉ごとなくなっていた。
ますます鶯丸の行動の意味がわからない。茶葉を独り占めしたかったのかな、なんて感想は似つかわしくない剣幕だった。
寝返りをうつ。ふすまの隙間から、わずかな月光が差し込んでいた。ひゅうう、と風切り音が耳のそばを通りすぎていく。
――デジャヴ。
いつか見た景色が二重になって、違和感が首をもたげる。
どうしてか、目尻からひとすじ雫が伝い落ちた。自分の頬に触れると、泣いていることに気づく。ぱちぱちと目をしばたく。そのたびに、ぱたりぱたりと涙が布団に落ちていった。
自分でも不思議でしょうがない。誰かがいなくなってしまうような、強迫観念じみた恐怖が胸の中の空洞を満たしていく。なにがなんだかわからない。
でも、早く、助けないと――
そのとき、月明かりの中をひとつの影がよぎった。
「……あーるじ」
呼びかけられる。
ひどく優しげな声は、鶴丸だった。