第13章 前哨戦
「結界ッ!」
女の鋭い叫びが思考を遮る。
弾かれたように男が「はっはい!」と返事をして、懐から何かを取り出した。札だ。
次の瞬間、濃密な霊力が男から放射され始める。男は扉を閉め、そこに札を貼ると何かを唱え始めた。
それと同時に、女性が山姥切に向かって走り出す。走りながら、彼女が勢いよく振りかぶった。
その刹那、彼女の手から何かが物凄いスピードで飛び出し、山姥切のすぐそばで豪快な破壊音を轟かせる。
「っ!?」
ビーッとけたたましい音を断末魔に、ディスプレイの光がフッと消えた。真っ黒な画面がうっすらと室内を反射する。
山姥切の手が止まった。機械がシャットダウンされたらしい。
その足元に、手のひらサイズの球体がころころと転がっていく。今しがた彼女が投げたものだ。
不透明な水晶玉は、山姥切の靴にぶつかって回転をやめる。
彼女が飛び付いた先は操作盤だった。鶯丸たちそっちのけで、見たこともない速さでキーボードを叩き始める。すぐ隣の山姥切など見えていないかのようだ。
どこからか取り出したのか、彼女は親指サイズの何かを機器に挿入した。あれはUSBメモリというやつだったか?
てっきり拘束でもされるのかと思いきや、女は機械に、男は結界の展開にと、それぞれの全集中力を注ぎ込んでいる。
二人とも鶯丸たちには無関心そのものだ。