第13章 前哨戦
「待ってください、ゲートを開こうとしているみたいです」
「ゲート?」
焦燥感が限界に達しようとしているせいか、頭が回らなかった。
ゲートって、どこに移動するつもりなんだ。
政府にあるゲートは、身分確認をする入口のゲートを除いて、政府の敷地外へは移動できない。移動先も決まったスポットだ。不法侵入者である鶯丸たちにとって、安全に逃げられる移動先はない。
こうしている間にも、侵入者を排除しようと職員がやってきてもおかしくはないのに――
そのとき、バン! という衝撃音が背後で上がる。
驚いて振り返ると、鶯丸の全身が凍りついた。
視界の端にいた前田も、同じように硬直している。目を見開き、呼吸も止めているかのように口を結んでいた。頭の中がサーっと冷えていく。
突然の出来事に、思考が完全に停止した。
そこにいたのは、スーツ姿の男女だった。
扉が開け放たれていることから、階上の保管室から降りてきたのだろう。部屋に飛び込んできた表情は対照的だ。
女性は硬い表情で、男性は驚愕に目を見開いている。
しかし二人ともが、所属と名前が書かれた名札のストラップを首から揺らしていた。
どう見ても、政府の職員だ。
「…………」
頭の中が“失敗”という文字で埋め尽くされる。同時に、急激に脳髄が冴えていく感覚がした。
――二人を無力化する。
どれだけの時間稼ぎになる?
俺と、あの二人、それから何を犠牲にすれば――