第13章 前哨戦
とっくに退路を見つけていたらしい前田に呼ばれる。
山姥切が自身のケースを破壊した。
どういう状況かよくわからないが、和泉守によれば、このケースもセキュリティシステムに繋がっているという。すでにシステムが反応しているに違いない。
和泉守と別れてそう時間は経っていないが、一刻も早くこの場を離れる必要性がある。
汗が背中に伝うのを感じた。山姥切を見つけた安堵はとうに吹き飛び、逃げなくてはという強迫観念が急き立ててくる。
山姥切が歩けないのなら背負ってでも走り出そうと思ったが、肝心の山姥切は、
「主……」
「あっ、おい!」
そう言って、鶯丸の肩から逃れようとした。
目的地があるかのように、ふらつきながらも歩こうとする。
「山姥切、急いでここを離れないといけないんだ」
我ながらきつい口調で言い放ってしまった。だが、山姥切の返答はない。鶯丸の肩を離れ、どこかへと歩を進めていく。
道草を食っている暇はない。審神者、その男士たち、それから和泉守――彼らの協力のおかげで、山姥切を見つけ出すことに成功した。それらを無下にすることはできない。
主のことを呼んだりして、幻覚でも見ているのか?
乱暴にでも彼を担ごうかと考えだして、山姥切が機械のもとで足を止めたのが見えた。彼は操作盤に手をつくと、ディスプレイを見ながら操作を始める。
「山姥切……!」
苛立ちを覚えてその肩を掴もうとすると、前田に止められた。
前田はディスプレイを食い入るように注視している。