第13章 前哨戦
ケースにゆっくりと手を触れた。
表面の冷たさが、指先から手に伝わっていく。彼の霊力も、彼の主の霊力も、何も感じ取ることができない。全てを遮断するような、硬質な材質が鶯丸と山姥切を隔てていた。
見える範囲に限っても、ほかにも山姥切国広がいる。どの山姥切国広が“彼”なのかわからない。
前田なら、主の霊力を感知して判別できるかと思いきや、前田も困惑した表情だ。眉が険しくしかめられ、こめかみに汗が伝っている。
「だめです、完全に密閉されてて……こうなったら山姥切さん全員を――」
短刀を取り出す前田。悔しげに唇を噛んで、自身を振りかぶる。
誰が仲間かわからない、それなら全員を出そうというつもりらしい。
そこまで時間は残されていないだろうと、慌てて止めようとして、
ピシッ
小さな亀裂音がした。
鶯丸が触れていたケースに、ヒビが入っていた。
ちょうど鶯丸が触れていた場所だ。ヒビの向こう側は、照明の青でもない、不可思議な空色をしている。よく見ようとして――
山姥切と、目が合った。