第13章 前哨戦
「同じ認知系に作用する術だな」
和泉守が事もなげに言う。
前田は口と目を見開いたまま固まっていた。そりゃそうだ、鶯丸が刀剣を折ろうとしたようにしか見えなかっただろう。
「どうしてわかったんだ?」
「アレがお前を模していたからだよ、鶯丸」
「俺を? いや、でもあれは俺ではなかったと思うが」
「でも、わかっただろ? 自分の欠片を、あの中に見ただろ?」
「……」
「ホンモノの目は騙せない、ってことさ。さぁ、とっとと行け!」
和泉守に軽く背を押され、その勢いのまま走り出した。
前方で走り出していた前田が、振り向き様に叫ぶ。
「ありがとうございます、和泉守さん!」
「おう! 頑張れよ!」
頼もしい激励が飛んでくる。
鶯丸も同じように声を上げた。振り返らないまま、和泉守は片腕を上げて返事をしてきた。
階段にたどり着くと、侵入を妨げる鎖はなくなっていた。暗がりが物も言わず、その口を開けて待っている。
鶯丸と前田は、駆ける勢いのまま、その穴の中に飛び込んだ。