第13章 前哨戦
前方から、硬い声が上がった。
和泉守がこちらを振り返る。薄暗い室内に、蒼い光を浴びた顔が浮かび上がった。耳にした言葉の意味が一瞬わからず、え、とつぶやきが漏れる。
、、、、、
「たぶん、お前にしか壊せない」
和泉守の瞳には、確信めいた光が揺らめいていた。
無意識に生唾を飲み込む。和泉守から、目の前の刀剣に視線を移した。
中に収められているのが誰なのかは、まだわからなかった。ひょっとして、自分たちがまだ知らない刀剣なのかもしれない。
一歩近づくと、刀身に自分の顔が映りこむ。見慣れた顔が、刀身に反射してこちらを見つめてきた。ひどく無感情だ。自分のものではないような、妙な違和感を覚える。
一瞬、瞳が金色に閃いた気がした。
そのとき、なぜか直感的にわかった。
これは、“偽物”だ。
「鶯丸さんっ――!?」
悲鳴にも似た前田の呼び声を後ろに、鶯丸は自身を振り下ろす。
金属、ではない。ガラスが割れるような、透き通る破壊音が響く。
柄を握る手に伝わるのは、予想通り、刀同士の斬り合いではなく一方的な破砕。
目の前に現れたのは、翡翠色をした破片だった。
元は円形だったことがかろうじてわかるが、鶯丸の斬撃によってばらばらに砕けている。どうやら鶯丸が斬ったのは、ガラス玉、もとい宝玉タイプの核だったようだ。