第13章 前哨戦
「驚きました……なにかの術の作用ですね」
冷静な前田の声が、ほんのり冷たい空気を震わせる。隣の和泉守は「久しぶりに入ったが、さらに広くなってねぇか?」とひとりごとのように呟いていた。
無意識にごくりと生唾をのみこみながら、部屋全体を見回す。
明かりは最小限なのか、全体的に暗い。しかも照明の色が青白く、余計に暗く感じられる。緑色をした非常灯が、足元をぼんやりと照らしていた。
まず目を引いたのが、巨大な機械だった。
大小様々のディスプレイがつけられ、やたらと大きな操作盤が見える。そこにたくさんの四角い機械が付いており、一個の巨大な機械をなしていた。審神者部屋にある端末の何倍もある。
しかし、部屋の多くを占めるのは、透明な長方形のケースだ。
そこに刀剣が一振りずつ収められていた。無論、顕現前の姿で、である。ケースの大きさは、短刀だろうと大太刀だろうと変わらない大きさだ。
つまり、一振り一振りの刀剣を収めるケースが大きい。
照明の反射かわからないが、ケースはどことなく青白い光を帯びていた。なんらかの術が施されているようだ。
そんなケースが延々と並んでいる光景は、超巨大な刀剣の展示場と表現しても遜色ないだろう。
ここに保管されている刀剣は、まだ顕現されていない政府所属となる刀剣、政府が敵襲を受けた際の予備戦力、事情があり一時的に政府で保護されて休眠状態となっている刀剣、などらしい。
鶯丸がスケールの大きさに圧倒されている中、和泉守が小声で説明してくれた。
ここに、探している山姥切国広も保管されているのだろうか。これだけ膨大な広さだ。打刀、いや、同じ山姥切国広だけでも何振りいるかわからない。
でも、微かでもいい。主の霊力の残り香があれば、判別がつくはずだ。