第13章 前哨戦
「そうなんだよな……?」
誰も答えない。
無機質な機械音だけが、あたりに響いている。
ゆっくりとしゃがみこむ。横たわる主の手に、壊れ物を扱うようにそっと手を重ねた。
五感全てが、この部屋が何年も変わっていないことを告げていた。
眠り続ける主と、規則的な機械音。消毒液のような薬品のかすかな匂い、手のひらに伝わるあたたかさ。
もう二度と、笑いかけてくれることも、名前を呼んでくれることも、淹れた茶を美味しいと言ってくれることもないのかという、絶望。
「俺を許さなくていいから、主、どうか……」
重ねた手のひらに、確かな温かさが伝わる。
どうしてもこの温かさを失いたくはない。
でも、そのために鶯丸がすることを、彼女はひどく悲しむだろう。
「俺は……どうすれば……」
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