第13章 前哨戦
普通の実験での主なら、科学者らしくこう言っただろうか。知的好奇心に目をきらきらさせ、人並み外れた知性を瞳孔に閃かせる主の姿が目に浮かぶ。
最後に見たのは十数年前なのに、いまだに鮮烈に記憶に焼き付いている。
でも、これは普段の実験なんかじゃない。
彼女はただ怒り、失望するだろう。
『鶯丸、キミがどうすべきかなんて、キミならわかっていただろう?』
「……」
彼女はどこか違和感を持ちながらも、刀剣たちを自らの刀剣として扱い、心を砕いていた。
今までの被験者で、これほどまでに刀剣に心を寄せる者がいただろうか。大抵は、自分の本当の刀剣を求めて狂ったり、“相性”が悪く殺されかけてまた狂ったりした。
だが、彼女は違った。
きっと彼女は、“悪魔の演算子”たりうるのだ。
そうだと信じなければ、鶯丸はこれ以上、彼女の本丸で“鶯丸”をやっていく正気を保てない。
「もうすぐなんだ……もうすぐ、完成するはずなんだ……」
先日接触してきた政府の人間の言葉を思い出す。計画が完成しつつある、そう言っていた。
だから止めるために力を貸してくれ、と。