第13章 前哨戦
彼女に“浄化”されたとも言える、今剣、骨喰藤四郎、それから獅子王。
「……やはり短刀は脆いな」
今剣は主との結びつきを失い、顕現に耐えうる霊力すら失ってしまった。だが、それでも“主”を害する行動をとらなかった。
消えないために今剣が最後に求めたのは、彼女の命ではなく、羽織だった。
「可笑しいんだ。骨喰は痛みを思い出して、どこか嬉しそうだった」
骨喰藤四郎もかなりの記憶を取り戻していたが、それまでの刀剣たちとは違って、凶行に走らなかった。ただ穏やかに消えることを選んだ。
「獅子王はもっと可笑しい。彼女に礼を言っていた」
獅子王も同じだ。
これまでの試行では、獅子王のような状態になった刀剣は、霊力を補充できないことで正気を失ってしまったり、霊力を求めて主や他の刀剣を攻撃したりした。
けれど、今回は違った。それどころか、あれだけの重傷にまで追い込まれたのに、通常のケースよりも生き永らえた。
助かる見込みもないのに、苦痛が引き延ばされているのが憐れだった。だから鶯丸は、彼の髪飾りを破壊したのだ。
彼を、“あの本丸の獅子王”として留めておく術の核を。
『獅子王を助けたつもり?』