第12章 侵入作戦
まただ。
この綴りに記録された本丸も、被験者の死で記録が終わっている。しかも刀剣による絞殺、と全く穏やかな死ではない。
どうか予感よ間違っていてくれと願いながら、他の冊子に手を伸ばしていく。
『26日目
……死因は縊死。一度目は“回転不変”が阻止したものの、再度企図した模様。
被験者について精神疾患等の病歴なし。1日目の錯乱時に投与されたL-581の副作用か、幻覚及び幻聴の症状ありと“回転不変”より報告。……』
『8日目
……死因は不明。急激な霊力の枯渇による衰弱死と見られる。
全刀剣の顕現解除。重篤な乖離発生により半数を廃棄。』
『21日目
……死因は腹部外傷による出血性ショック死。該当刀剣の加害行為を阻止しようとし、“回転不変”が負傷。
該当刀剣については練度が高く、廃棄処分は不適当との判断から、長期初期化安置処理。……』
(なんなんだこれは……!)
思わず叫びそうになり、慌てて口元を押さえる。
今まで読んだ冊子全てが、被験者の死で記録が終わっていた。例外なく、全てだ。しかもどのケースも、1カ月足らずで死に至っている。
被験者や刀剣の扱いは、まるで使い捨ての実験体だ。つぶさに監視されてはいる。しかし、積極的に命を守られてはいない。データが得られればそれでいい。所詮データのひとつでしかない、という冷たさが伝わってくる。
唯一“回転不変”という存在が、被験者を刀剣の攻撃から守ったり、自殺を阻止したりしている。どの冊子にも名前が出てくる。監視する側の一人なのだろうが、誰だろう。刀剣の攻撃を阻止しようとしているなら、おそらく刀剣だろうか。しかし、こんな名前の刀剣いたか?
と、『“回転不変”の負傷状態について』という報告書が添付されていることに気づいた。
負傷したそのときの状況や、傷の具合が書かれている。右腕、左脇腹をひどくやられたようだ。最終的に手入れで完治したようだが、まじないの類いの影響がないか検査入院したと書かれている。三日三晩、傷口から血が止まらなかったせいらしい。
痛々しい傷を作った上半身の写真があった。所々切り裂かれて破れた戦闘服に、一瞬目を疑う。あまりにも見慣れた、黒と、緑色の組み合わせだったからだ。
見間違うはずがない。
だってこれは――
「……俺?」