第12章 侵入作戦
さっきの警備員の話によれば、今なら、ここら一帯に警備員はいないはずだ。職員の出入りも少ないらしい。
足早に中庭を横切り、保管室がある西棟を目指す。陽動のおかげで誰ともすれ違わなかった。鍵を探すのにはパニックになりかけたが、順調じゃないか。
いよいよ西棟の入口にたどり着く。西棟通用口となる建物は、どことなく威圧感があった。
あたりに人の気配がないことを確認して、鍵をさしこむ。一抹の不安があったが、鍵はすんなりと錠前に吸い込まれた。そのまま回すと、カコンと開錠音が響く。極力音を立てないように金属製の扉を開き、隙間にするりと身を滑り込ませた。後ろ手に扉を閉める。金属音がやけに耳障りに響いた気がした。
「……寒い」
思わずそんな呟きが口をついた。
空気が、変わったのだ。
空調のきいた屋内にずっといたので、中庭に出たときは余計に暖かいなと感じた。それが、中庭を通り抜けて西棟に足を踏み入れた途端、感じる温度が明瞭に変わった。ひんやりとしていて、空気が止まっていた。風の流れがない。
照明もところどころ消えていた。
なるほど、今日は人の出入りが少ないらしい。それとも常時こんな具合なのだろうか。
薄暗い廊下が、鶯丸を待ち受けていた。