第12章 侵入作戦
「ひ、100個だと?」
「モノ自体じゃなくてな、なんでも購買データの入ったメモリを落とされちまったんだと。ほかの刀剣様も一緒になって探されてる」
「は、はぁ……」
「俺たちも早く行って手伝ってさしあげねぇと。また上からどやされっぞ!」
「なんでまたこの人が少ない時間帯に……」
政府にもいろいろ派閥があるという。
刀剣を神として崇めるもの、崇めるがゆえに戦いに“使う”ことに反対するもの、神でなくあくまで道具としてみなすもの。
とは言え、『政府の人間は、刀剣を神として極力丁重に扱うべし』という規範があるらしい。
そんな神様が、甲州金ウン万円相当の、刀剣によっては主の親愛を表す道具であるお守り、しかも極、を100個もなくしたのだ。運悪くも、政府の建物内で。
政府の人間がとるべき行動は、基本的にはその捜索の手伝いとなってしまう。
口調は乱暴だが、「刀剣様」と呼称した警備員は、どちらかというと刀剣を神として崇める方の派閥なのか。対してもう一人の警備員は、あからさまに面倒くさそうだ。
「こっち人がいなくなるがいいのか?」
「いい! どうせ今日も大して職員さんは来ないだろうよ」
足音と話声がだんだん聞こえなくなっていく。しかし、さっきの総務課に戻ってきた女性職員のように、突然戻ってくることだってあり得ないことじゃない。足音が完全に消えたのを確認してから、鶯丸は中庭に飛び出した。