第12章 侵入作戦
一度深く息を吐き、扉を開ける前の位置まで戻した。それからフロアに目を向け、東側入口付近を探す。
あった。ロッカーよりもインテリアらしいが、いかにもオフィス用品といった棚が。
最短ルートを考えながら、足早に歩を進める。書類が散乱する机、きれいに整頓された机、何も置かれていない机、いろいろな机の間を巡り、棚にたどり着く。
棚には主に書類が格納されていたが、その中に、金属製のお菓子の箱が見えた。鍵などの小物はおそらくここだろう。
プラスチック製の扉をスライドさせると、すんなり横に動いた。こちらも開いている。念のため顔を上げ、あたりを見回して聴覚を研ぎ澄ませる。耳にはいってきたのは、空調の音だけだった。
と、視線の先にちょうどエアコン機器のディスプレイがあった。24℃。この時期とすれば、少し涼しいくらいなはず。
だが鶯丸は、こめかみに一筋伝う汗を感じていた。時間だけでなく、自分の精神状態との戦いでもあるようだ。
お菓子の箱を開く。目に飛びこんできたものに、サッと血の気が引いた。
箱の中に眠っていたのは、指一本より小さいプラスチックだった。たしかこれは、USBとかいった電子記録媒体のはず。さらに箱の中を漁るが、鍵はない。指先が冷たくなっていく感覚を覚える。焦るな。棚自体を探すんだ。
箱を一旦脇に置いて、棚に目をやった。隙間なく書類が詰まっている。
鍵がかかりそうなフックも、小物入れも、何もない。呼吸が浅くなっていく気がした。遠くで人の声が聞こえる。気のせいかもしれないし、本当かもしれない。
冷静さを欠きつつある自分には、もうあまりここに留まる時間は残されていない。