第12章 侵入作戦
政府の敷地内に無事潜入した鶯丸たちは、人気のない廊下で早々に分かれた。研修を受ける主にそのまま随行するグループ、陽動を行うグループ、それと、保管室を目指すグループ――鶯丸だ。
陽動という役回りに、男士たちは目に見えて緊張していた。彼らのたっての願いを断り切れなかったが、どうしても罪悪感を覚える。
もし侵入騒ぎがバレてしまったら、政府、あるいは鶯丸たちの行動を快く思わない勢力が、協力者たちにどんな処分や制裁を加えるかわからない。いくら強く協力を申し出られたとは言え、やはり断るべきだったろうか。
何度目かの
「やっぱり俺だけで――」
という断り文句が喉から出かかるが、陽動部隊の隊長の一人を務める乱が、怖いくらいニッコリした笑みを向けてきた。
本丸で同じように協力を断ろうとしたときに、「自分のあるじさんを助けたいんじゃなかったの?」と鬼詰めされた記憶がよみがえる。
説得は無駄なことだと再確認して、鶯丸は言葉を変えた。
「それじゃ、手筈どおりに頼む」
「まっかせて!」
満開の笑みを咲かせる乱。
「自分のやることだけに集中しろ」
硬質な雰囲気をまとい、長谷部が低く応える。彼もまた、もう一つの陽動部隊の隊長だ。
「無理せず、危ないと思ったらすぐ呼んでください」
「それ、ちゃんと返しに来てよ」
審神者とその初期刀である加州が、そう言って口を真一文字に結んだ。加州が指さしたのは、緊急連絡用として審神者から貸し与えられたスマホだ。
よくわからないが加州は、鶯丸につっけんどんな態度をとるのがデフォルトだった。けれどその言動の端々に、仲間への思いやりや心遣いが見え隠れしていた。なるほどこれがツンデレというやつか。つつけば泣き出しそうに歪んだ眉が、審神者も加州もよく似ている。
頼もしい仲間たちに、鶯丸はしっかりと頷いてみせた。