第12章 侵入作戦
「大丈夫だから、ほら、見つかったぞ」
「もっ、申し訳ありませんっ!!」
そんなふうに思考を巡らせていると、目の前の一行から叫び声が上がった。
年若い女性に、山姥切国広、それから小夜左文字の3人組だ。見れば、審神者とおぼしき女性が、かたわらの山姥切国広に深々と謝罪のポーズをとっていた。今にも土下座せんばかりの勢いである。
鶯丸たちは、政府の敷地内の入り口に来ていた。建物に入る手続きとして、審神者とその随行男士の身分確認をするためだ。新人審神者研修があることから、それなりに列は長い。鶯丸たちの後ろにも何人も並んでいる。というか、鶯丸一行がかなりの大所帯だ。
目の前の組が終われば鶯丸たちの番なのだが、なかなか手間取っているらしい。
鞄のなかからやっと見つけたのか、山姥切国広の手には審神者のものであろう身分証明書があった。それを役人に手渡すと、すぐさま違う書類にペンを走らせる。彼は手際よく、テキパキと手続きを進めていた。
審神者らしき女性は「こんなことまでご迷惑をおかけするなんて……ダメすぎる……」と今にも泣きそうな顔でしおしおと落ち込んでいる。
対してそばに立つ小夜左文字が、「主のことだから、ちゃんと持ってるって僕はわかってたよ」と彼女の背中をポンポンしながら優しく慰めていた。
なかなか見ない山姥切国広と小夜左文字だなと思っていると、彼と、手続き担当の役人の話が聞こえてきた。どうやら本来随行が不要なくらい安全な用事に、山姥切と小夜が随行しているらしい。
いわく、審神者の希望とのことだった。用心深いのか。いや、あの様子では自信がないのだろう。念には念を、といったところか。
ず~んと落ち込んでいる審神者をちらりと見て、役人は小さくため息をつく。政府が示す随行の人数は、あくまで目安だ。強い希望を拒否するまではできないのだろう。ましてや、俗世に降り立った“神様”を無下に帰すことも。
「確認しました。どうぞお通りください」
しょうがない、とばかりに一行が通された。
しめた。同じ路線で鶯丸たちもいけるだろう。何せ、こちらは二人三人どころではない。
次に手続きをしようという一行が、今さっき対応した一行よりももっと大所帯なのを目にし、役人は再びため息をついたのだった。