第9章 楼閣崩壊と彷徨わない亡霊
「熱心だな」
背後から声がかけられる。振り向くと、鶯丸が半分開いた襖に寄りかかり、腕組みをして立っていた。
端末を食い入るように見ていた私は、声をかけられるまでその気配に全く気づかなかった。
「あ……ごめん、気づかなかった」
「少し休憩でもとったらどうだ? 茶を淹れてやろう」
そう言って休ませようとしてくれる鶯丸に、泣き出したいような気持ちになる。優しくされると、一人では立っていられなくなってしまいそうだった。
「主が元気でなければ、俺たちも元気じゃいられないからな」
確かに、私の体調が悪かったり、霊力が不十分だったりすると、男士たちも戦うのがままならなくなってしまう。イベントに意欲的な彼らに申し訳が立たなくなる。
それだけでなく、鶯丸の声音からは、純粋に私の体調への気遣いがうかがえた。
私の願望が入り混じった解釈、なのかもしれないけれど。
「……心配かけて、ごめん」
「休み休みでいいのさ」
内番をサボるときと同じような口調で、鶯丸は言った。思わず頬が緩む。
私は鶯丸に言われるまま、審神者部屋を出て台所へ向かった。椅子を引かれ、座るよう促される。なんと、鶯丸が茶を淹れてくれるらしい。