第9章 楼閣崩壊と彷徨わない亡霊
あんなことがあったのに、政府は容赦なかった。
戦力拡充イベントの日課は、毎日変わらず下りてくる。
とは言え、一昨日も昨日も今剣を探すのに手いっぱいで、他には何もできなかった。
それからというもの私は、日課を消化することに集中するようになった。
そうでもしなければ気が狂いそうだったからだ。
何かに精神と身体をつぎ込んでいなければ、頭の中で際限なく悪夢がうみだされ、体を動かなくさせてしまうと思った。
当然、今まで以上に、陽が落ちる頃には気力も霊力も使い果たしているようになった。
疲労のおかげで布団に倒れこめば、しばらく意識を眠らせることができる。
悪夢に飲み込まれる、その一歩手前で逃れることができる。
それでも夜、目が覚める。
まどろみは一瞬で消し去られ、今剣の姿を探し始めてしまう。そしてそのたびに絶望を刻みつけられる。
あの高下駄の音は、もう本丸のどこからもしなかった。