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【刀剣乱舞】ラプラスの演算子

第1章 主が消えた夜





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 遠くから誰かが近づいてくる。

 ぼんやりとした聴覚が、覚醒を促してきた。

 浮上してきた意識を掴み、ゆっくりと体を起こそうとする。

「……あっごめん、起こしちゃった?」

 と、目に入ってきたのは燭台切だった。申し訳なさそうに苦笑している。

 彼はふすまを開けたまま、部屋に半分体を入れて膝をついていた。

 その手元には、鶯丸の内番服などの衣服が畳んで置いてある。届けに来てくれたらしい。

「これは内番服、これは寝るときの着物で――」

 燭台切は丁寧すぎるほど丁寧に説明した。

 まるで鶯丸に、その衣服を初めて見せるかのような口ぶりだった。

 ふすまの外を見ると、太陽は昨日より高い位置で照っていた。

 いつもなら近侍の誰かが総員起こしに来るはずだが、二日酔いでダウンしているのだろうか。

 しかしこの燭台切、いたって平常運転である。
「寝坊してしまったようだな」

「あぁ、いいんだよ。まだ顕現されてばかりだからね、これから起床時間を合わせていけばいいって主も言ってたよ」

「そうか。……ん……?」

「じゃ、広間に食事を用意しておくよ。困ったことがあったらいつでも呼んでね」

「……あ……あぁ、わかった」

 爽やかな笑みを残し、燭台切が部屋を出ていく。

 途中でよくわからないことを言っていたが、見た目に出ないだけで二日酔いなのだろうか。

 服を着替え、支度を整える。

 記憶の中の内番表によると、たしか今日は馬当番が回ってきているはずだ。

 相方が誰かは覚えていないが、寝坊したことを咎めない人物だといい。

 部屋を出て広間に向かったが、広間の前につくまで誰ともすれ違わなかった。

 まさか相当な人数がダウンしているのだろうか。それとも、皆すでに出陣や遠征に行ったのか。

 昨夜宴会が行われた広間に踏み入ると、意外でもない人物が出迎えた。
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