第68章 諦め
「ちょ、ちょっと…落ち着いて…!大丈夫…だから!」
泰葉は両親に訴えると、だんだんと落ち着き離れてくれた。
花「…とりあえず、生きててよかったわ。手紙が来た時はどういうことかと思って、飛んできたのよ。」
「こっちから行こうと思っていたのに…」
泰葉と両親が話していると、由梨恵が勢い良く頭を下げる。
3人は驚きながら由梨恵を見た。
由「泰葉さんを、危険な目に遭わせてしまったのは、私のせいなんです!
私の勤め先で、人手が足らなくて…!!
それで私がお願いしたばかりにっ…」
「由梨恵…。
お父さん、お母さん…違うの…由梨恵は…」
一生懸命に謝る由梨恵。
智幸は泰葉を制して、由梨恵の肩にポンと手を置いた。
智「君は…確か由梨恵さんだったね?
泰葉と仲良くしてくれてありがとう。
今回の件は君も危険だったのだろう?」
「…はい。でも…」
花「悪いのは由梨恵さんじゃ無いわ。襲った男達が悪いのよ。
粗方話は聞いてるから、貴女のことを怒ったり、恨んだりもしていない。
勿論、由梨恵さんのせいなんてこれっぽちも思っていないわ。」
由梨恵はそう微笑む泰葉の両親に、ここに来た時の様にポロポロと涙を流し始めた。
「…粗方の話は聞いたって…どこから?」
由梨恵の背中を摩りながら、ふと疑問に思った。
手紙では、悪い男達が絡んでいることなど話していない。
花「煉獄家の皆さんよ。」
「えっ…⁉︎」
智「泰葉から手紙が届いた時は、何事かと驚いた。
でもね、その後すぐに要くんが来てくれて、煉獄家からの手紙を届けてくれたんだよ。」
杏寿郎からの文にはそんなことは書かれていなかった。
泰葉が手紙を出したのを知っていたかの様な、絶妙な頃合い。
どこからか見ていたのだろうか…。
花「さぁ、泰葉。
ちゃんと説明をしてもらおうかしら。」
花枝がニコッと微笑む。黒い影を背に纏いながら…。
由梨恵はそれを感じとり、「私はこれで」と何度も謝りながら部屋を出ていった。