第9章 遊廓
〜天元視点〜
昼間の花街
天元は鬼の情報を探るため、街を歩く。
しかし、これといったものがない。
花街は今の時間、昼見世が開かれている。
この時間は正直、見せもの状態の女達。
客というより、『一度は遊廓を歩いてみるか。』と、昼間しか動けない、冷やかしの男ばかり。
だから、女達もそこまで派手な化粧もせず、柵の中で三味線を弾いたり、歌留多などをして過ごしている。
この店は最近できたらしい。
まだ女の数も少ないが、美人が揃っていた。
男たちも寄ってたかって見物している。
「…よくここまで美人が集まったもんだな…」
俺は少し怪しく思った。
遊廓に売られる女は事情がある事が殆どだ。
家のため、生きるために
仕方なく売られてくる。
正直言って、美人ばかりが遊女になるとも限らない。
ここまで美人揃いである理由…
「人攫い…」
美人を攫って、本人の意思に関係なく売られて
身売りをさせる…違法な店だ。
反抗するものは暴力で捩じ伏せる。
正式な遊廓とは違い、客と寝るまでの手順を踏まない。
いきなり客と致すことを強要させる。
客は美人と寝られるならと、少し値が張っても集まるというものだ。
不憫だな…と、俺はそこにいる女達に目をやった。
案の定、彼女たちは笑顔を作っているが、目は虚ろだ。
その中で、部屋の奥の方にいる
一際美しい女と目があった。
ぱっちりした目
筋の通った鼻
ぽってりとした唇
少しふっくらとした頬。
髪に癖があるかは纏められているので分からないが
煉獄から聞いた特徴によく似ている。
一瞬だが俺が見た泰葉の姿にもよく似ていた。
そして、その女の目は『助けて』と言っていた。
しかし、決定できる自信がない。
もし、声をかけて人違いでは、買ってくれと一悶着起きるだろう。
そんな無駄な時間はとっていられない。
…どうする…
その時、俺は思い出した。
竈門なら、顔も匂いも分かるはずだ。
そう思い、ときと屋に働き手として潜入している竈門を呼び出した。
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