第67章 後悔 ❇︎
とりあえずと杏寿郎は着ていた道着と袴に戻る。
もう少しすれば、雛鶴達が来るだろう。
杏(湯と手拭いか…。着替えもあれば尚よしなのだが…)
なんせ今は無人宿。
勝手も分からなければ、湯がどこにあるのかも分からない。
杏(誰もいないと言えど…誰に会うか分からんからな…。泰葉を1人にもしておけまい。)
そんな事を1人で考えていると、トントンと襖がなった。
全くもって気配がしなかった為、流石の杏寿郎もピクッと体が動いた、
雛「煉獄様、おはようございます。
替えの着物と、湯をお持ちいたしました。」
杏寿郎は心の声が読まれたのかと目を丸くする。
杏「流石だな。ありがとう。」
杏寿郎は泰葉に取り敢えず布団をかけ、肌は見えないようにし、襖を開けた。
雛鶴がペコリと頭を下げ、必要なものを部屋へと運び入れる。
雛「泰葉さんの身支度は私が整えておきます。
煉獄様は1階奥の湯に入ってきてください。」
杏「…いや、それは必要ない。」
杏寿郎がそういうと、雛鶴は首を振る。
雛「人気(ひとけ)のないうちに、蝶屋敷へと泰葉さんを運んでいただきたいのです。
泰葉さんのためにも、清潔にされて来てください。」
優しくそう微笑まれれば返す言葉もない。
杏寿郎はたじたじに頷き、湯浴みへと向かった。
静かな大きな湯に浸かる。
こうして湯に入っていると、先程までのことが嘘のようだ。
杏(泰葉さんは…やはり覚えていないのだろうか。)
覚えていてほしいような、ほしくないような…。
だが、薬のせいでああなった姿は泰葉には耐え難いだろう。
そう思うと、やはり思い出さないでほしい。
杏「あの男達の事も忘れてくれれば良いのだが…。」
はぁ…とため息を吐くと、要が窓際に止まる。
『宇髄様、不死川様、冨岡様。
男共 処理 完了!!』