第9章 遊廓
音柱 宇髄天元
彼は今、花街にいた。
炭治郎、善逸、伊之助を従えて。
ここ花街に鬼の情報が入っていたのである。
すでに天元の3人の嫁
雛鶴、まきを、須磨の3人が遊女として
怪しい3つの店に潜入していた。
しかし、その3人とも連絡が途絶えてしまったので、
不本意ながら、炭治郎達が女装をして
潜入に入ったのだった。
天「…泰葉が攫われた…か。
鬼の仕業なら鬼舞辻のところか。
もし、人間の仕業なら…ここかもしれねぇな。」
面倒な案件…とは思わなかったものの、
泰葉の顔をハッキリとは分からない。
杏寿郎の情報も、どこまでが正しいかが問われる。
そんな中、見つけられるだろうか…
と少々の不安があった。
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泰葉は、一日通して
接客のイロハを叩き込まれていた。
琴に三味線、舞に言葉遣い。
もうクタクタだった。
休憩が与えられ、外を見る。
よく晴れていて、自分の気持ちと裏腹に
清々しかった。
この店には泰葉の他にも女の子がいた。
みんな自分よりはるかに若い。
目は虚ろ。
悲しみを潜ませていた。
泰葉は、自分の一番近くにいた
ふうか という女の子に話しかけた。
「こんにちは、私は泰葉。
ふうかちゃんは、どうしてここに?」
ふうかは泰葉の方に顔を上げる。
ニコッと微笑む泰葉を見て、安心したのかここに来た訳を話してくれた。
『私のお母さんと、お父さんは…私を売ったりしない。
朝、起きたらここにいたの。』
泰葉は驚いた。
遊廓に入る女の子は、家庭の事情だったり身寄りがなかったりする子が多い。
「もしかして、ここにいるみんな…攫われた子たち?」
ふうかは、うん…と頷いた。
泰葉は頭に血が上った。
通常ならば、借金を返済するために遊女になり、自分の中で納得した上で身売りをしているだろう。
しかし、この子達は違う。
こんなところに来る必要もなかったのに、攫われて
力で捩じ伏せられ、身売りをさせられている。
こんなに残酷なことがあるだろうか…。
しかし、泰葉も今は囚われの身。
楯突こうものなら、女将の後ろに付いている
屈強な男に殴られて、最後には死んでしまうだろう。