第67章 後悔 ❇︎
瞬き1つする間もないくらいの時間で、考えを巡らせた杏寿郎は木刀を左手に持ち直し、右手を握り力を込める。
そして、そのまま杏寿郎の拳は祐一の鳩尾に鈍い音を鳴らしながら食い込んでいった。
祐一もこの世界に入ってそれなりの地位にいる。
だからやり合う術も短刀も持っていて、杏寿郎に向かって振り翳してもいた。
だが、そんな祐一は目を見開き、口からは血を吐いて宙へと舞う。
祐「ぐぁ…かはっ…!!!」
祐一が決して鈍く弱いわけではない。
杏寿郎が速く、強すぎるのだ。
しばらく宙を舞った祐一は和誓の前にドサッと痛そうな音を立てて落ちる。
辛うじて息はある祐一の姿に、流石に怯む和誓。
杏「これ以上、泰葉には一切関わらないでいただきたい!!
次はない!!罪に問われようが大切な人に危害がある場合には、容赦なく首を打つ!!」
杏寿郎の警告がビリビリと倉庫を震わせる。
和「チッ!使えねぇ!!」
すっかり伸び切ってしまった祐一をドカッと蹴飛ばす和誓。
杏寿郎はその様子にまた怒りが込み上げる。
祐一は勿論許せない。
しかし、部下を物のように蹴飛ばす悪党の親玉はもっと許せなかった。
ぎりっと拳を握る杏寿郎。
すると、ポンと肩に手が置かれる。
怒りのこの気持ちにそぐわぬ手。
しかし、そのおかげで見失いつつあった杏寿郎のらしさが戻ってきた。
天「おーし。一発ずつ殴ったな!まぁ、まだ気は済まねえだろうが、あとは俺たちに任せろ。」
杏「あぁ!全く気が済まない!!危うく命を奪ってしまいそうだった!!」
溌剌と言うには些か物騒な言葉だったが、我を失いそうになっていた杏寿郎がいつもの調子になって、ほっと胸を撫で下ろす天元。
天「後は俺たちがよーく説教しておく。煉獄は泰葉のところに行ってやれ。お前しかできない治療だ。」