第66章 消失
あぁ、もう自分には力はない。
この男達に対抗しても、所詮女の力。
ここの女性達はどうなるのだろう…。
由梨恵は…?
杏寿郎さん達…来てくれる筈…。
お願い、杏寿郎さん…
早く来て…。
女性達を助けて…。
泰葉の目からはぽろぽろと涙が止まらない。
祐一はそんなことよりも、泰葉の肌に印をつけたのは誰なのかが気になって、苛ついている。
祐「この印は…」
「きょう…じゅろ…さん…」
放心状態の泰葉が呟いた「杏寿郎」の名前。
すると、祐一は奇声のような叫びをあげ泰葉を揺さぶった。
祐「その名前…!!どうしてその名前が出てくる!!あいつが、あいつが泰葉を抱いたのか⁉︎俺よりも先に!!!!」
狂ったように叫ぶ祐一に、我に帰る泰葉。
そして、無意識に口にしてしまった彼の名でこうなっていると悟る。
しまった、と思ってももう遅い。
祐一はキュポンと赤い小瓶を開けると、無理やり泰葉の口に流し込んだ。
咄嗟に口を閉じるも、指でこじ開けられ嫌でも液体が入ってくる。
苦い薬に無理やり甘い味付けがされたような、そんな味だった。
祐「飲め!!飲み込め!!そして俺のものになると言え!!!」
「んん…!!んぅー!!」
泰葉があまりにも抵抗するため、祐一が叫ぶ。
祐「ちゃんと飲まないと、この女が代わりに酷い目に遭うぞ!!」
そう言って連れてこられたのは由梨恵。
由梨恵はガクンと項垂れており、男に掴まれてやっと立っているようだった。
(……由梨恵!!!)
泰葉が目を見開き、抵抗が緩まった瞬間祐一が一気に流し込む。
液体が口から溢れ、身体をもつたう。
口を押さえられ、身体を揺さぶられてごくんと泰葉の喉が鳴ってしまった。
途端にカッと熱くなっていく身体。
強い酒に充てられたような感覚。
ドクンドクンと脈が鳴り、身体の奥からジンと疼く感覚が湧いてくる。
「はぁっ…な、に、これ…はぁっはぁっ…」
けほ、けほっと咳をし吐き出そうとしても出てこない。
すると、バンッと扉が開く。
杏寿郎が来てくれた…、そう思った。