第66章 消失
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泰葉は段々と意識を戻し、ゆっくりと目を覚ます。
まだぼんやりした頭でいるが、どうやら周りも暗いようだ。
四隅に小さな松明が焚かれており、その位置を見るにそこそこ広い場所。
「んっ…!」
起きあがろうとすると、身動きが取れず腰元で手首、両足も縛られているのが分かった。
そして口には布を咥えさせられている。
(ここは…どこなの?)
『…うぅ、う…』
『う…う…』
女性…だろうか。
泣いているような、呻いているような、そんな声が聞こえる。
ここには他にも誰かがいるようだ。
由梨恵は無事だろうか…。
泰葉は首を持ち上げ、辺りを見るがやはり見えない。
そして、何よりも寒い。
すると、ガラガラと引き戸を開けるような音がして、数名の男の声が聞こえた。
『今日攫ってきたので、ちょうど20名になりました。』
『そうか。抵抗しなくなった女からアレを飲ませろ。』
『とうとうアレの出番ですね?もちろんそれは…俺たちも…。』
『どんなんでも受け入れるようにするからなぁ。まぁ、1人くらいお前にも分けてやるよ。』
『ありがとうございます。へへ…愉しみでさぁ。』
すると、バチンッと音を立てて一気に電灯が灯る。
泰葉は目が対応しきれずに顔を顰めた。
だんだんと光に目が慣れてきた時、泰葉は言葉を失った。
ここは80坪程だろうか。
この建物は倉庫のようだ。
そこに女性が泰葉と同じように縛られ、転がっていたのだ。
硬い土の上に申し訳程度に茣蓙(ござ)が敷いてあるだけ。
そして、更に目を疑ったのは、女性たちの格好。
今泰葉は衣服を着ているが、寒さを感じる。
もう秋から冬に変わりかけているというのに、皆襦袢姿や、下着姿でこの冷たい所に横たわっているのだ。
女性たちはガタガタと震え、近くにいる人の唇は青くなっている。
(…なんて酷い扱いなの…。これが攫われた女性達?)
男達が女性たちを物のように蹴飛ばしながら歩いてくる。
泰葉はその様子を険しい顔で睨みつけた。
絶対に許すことはできない。
『久しぶりだね。泰葉…』