第66章 消失
その音の正体は杏寿郎が刀袋から木刀を瞬時に出して、天元の後ろから襲いくる、小刀を受け止めた音だった。
『へぇ。随分な用心棒付けてんだなぁ。』
杏「お褒めいただき光栄だが、些か金の要求の割には物騒じゃないだろうか!!」
2人の周りを囲むように男達がジリジリと近づいてくる。
天「こりゃ歓迎されてるようだぜ。」
杏「あぁ!命さえ奪わなければどうしたって良いとのこと!」
『なぁにブツブツ言ってんだよ!』
男達は拳を振り上げたり、短刀を振り回したりして襲って来た。
襲って来たのであれば、こちらも遠慮をする必要はない。
こちらの相手は10人。
全部で45人いる筈だ。30人弱が全て不死川達の方へ行っているということだろうか。
だとしたら厄介だろう…。
『考え事とは…、余裕だなぁ!!』
杏寿郎に殴りかかって来た男の腕を取り、捻りあげる。
そのまま男の体を背負い投げるように弧を描かせて、地面に叩きつければ、男から『う゛っ・・』と声が漏れる。
『畜生…!!』
短刀を向けてきた男には手首をタンと弾き、そのまま後頭部を手刀で気絶させていく。
皆腕っ節には自信があるのか、流石にすぐには伸びないようだ。
10人でもそれなりに骨のある奴らを相手するのは容易ではない。
なんせ命を奪ってはいけない。
天「ったく、めんどくせぇ!!一発吹き飛ばすか…!」
天元が火薬玉を取り出し、このまま打ち付けようとした時、1人の男がシュンと目の前に姿を現した。
『物騒なもん持ってんじゃねえか…!』
天元の間鼻の先でニヤリと笑う男。
ずっと後を追っていた双子の男だ。
天「てめぇ、忍だな。」
『同業者、仲良くやろうぜ…』
天「忍は皆友達…ってか!」
ガチッ!!
男の短刀を天元は忍ばせていたクナイで受ける。
『その目の色…お前宇髄だな。
逃げ出した長男坊とは…お前のことかっ!!」
天「何とでも…言えっ!!あんな、血も涙もない…ことしてられるかって!!」
おそらく、この男も腕利きの忍だ。
押されはしないが、なかなか厄介な相手ではある。