第66章 消失
杏寿郎と天元の元に1羽の鴉が降り立つ。
杏「む、君は不死川の鴉…」
実弥の鴉、爽籟(そうらい)。
そっと杏寿郎に耳打ちする。
杏「…!それはどういうことだ…!」
爽籟伝達によると、実弥達の下っ端のところにも坂本が合流するとの情報。
天「なんであっちこっちで、親玉が合流する情報が流れてんだよ!」
杏「不死川の方とここが合流する…ということか?」
爽籟にどこから来たかと尋ねれば、そこは杏寿郎達がいる場所から距離がある。
今から合流するのはあり得ないだろう。
とりあえず爽籟にこちらの状況を伝えてもらうようにし、天元は虹丸をどこかに飛ばした。
天元はこの状況が不可解で仕方ない。
ただの悪党がやることにしては、この手の込んだ作戦。
随分と手慣れた策士がいるものだ。
天(このやり口…やっぱり…)
天「煉獄、この輩達はただもんじゃねぇ。どこに罠が張ってあるか分からねぇから気をつけろ。」
杏「相分かった。それは君の同業者ということか…?」
天「…あぁ。おそらくな。」
日も短くなり、辺りが暗くなった。
提灯の灯りが幾つか集まる。
もしあの男達の話が本当ならば、そろそろ和誓が現れても良い筈だ。
天元が側の建物の方を見ると、配置された警官達が頷いた。
天元と杏寿郎は一般人の姿。
ならば近くを通ったって気付かれやしない。
天「行くぞ、煉獄。」
杏「あぁ。」
2人は提灯が集まる場所へと向かって歩き出した。
提灯の灯りが近づき、それぞれの顔がぼんやりと確認できるようになった頃、1人の男がこちらを警戒し始めた。
『おい、てめぇら何だ。』
ただ通っているだけなのに、この絡まれ方。
普通なら踵を返して引き返すだろう。
天「私たちはこの先に用がありましてね。」
『小綺麗な顔しやがって。女に不自由したことありませんってかぁ?』
天「とんでもない。私は小説家でして、家からあまり出ないので出会いもなにも。」
『けっ、んなことまで聞いてねぇよ。変わった奴だな。さっさと行きな。』
意外とあっさり通してくれるようだ。
天「ありがとうございます。」
天元が頭を軽く下げて2人が去ろうとした時、
『その前に、金を置いていきな…!!』
ガキィ!!
と大きな音がした。