第66章 消失
泰葉はそっと裏口から様子を伺う。
するとそこには羽交締めにされて泣き叫ぶ由梨恵と、男が3人。
由「ちょっとやめて!!触らないで!!」
『うるせぇ女だ!ちっとは黙ってられねぇのか!!』
(由梨恵!!)
まさか本当に人攫いに遭遇するとは…。
泰葉はギリっと拳を握る。
由梨恵を助けなければ…。
男は3人。1人は由梨恵を羽交締めにしていて、もう1人は由梨恵の胸ぐらを掴んでいる。
そして見張りが1人…。
どこから攻めれば1番由梨恵の安全が確保できるのだろうか…。
戦う能力はあれど、戦術まで身に付いているわけではない。
鬼と戦っている時には必ず柱や隊士がいた。
店長を呼ぶ暇もない。
由梨恵を救えるのは自分1人。
(どうする…どうする私…)
『眼鏡の女はどこだって聞いてんだ。』
由「言うわけ…ないでしょ!!」
『早く言え!!』
(狙いは私⁉︎昼間の男とは違う奴なのに…なぜ私を知ってるの?)
その判断の遅さが凶に出たのか、泰葉の後ろにも気配が近づく。
「…!!」
泰葉が慌てて振り返ると、男にいきなり布のようなもので口と鼻を塞がれる。
抵抗しようともがくと、その布からは薬品のような匂い。
(しまっ…)
と思うと同時に、泰葉の意識はぱたと途切れてしまった。