第66章 消失
午後5時半。
ようやく退勤時間となる泰葉達。
由「ふぅ、片付けも済んだし着替えて帰りましょうか!」
「うん。」
2人が更衣室へと向かおうとすると、店長が泰葉を呼び止める。
由梨恵は先に更衣室へと向かった。
店「いやー、本当に助かったよ!働きぶりも良いし、お客様は皆泰葉ちゃんの笑顔の虜さ。
もし良かったら今後も働かないかい?」
泰葉は店長の言葉に嬉しい気持ちもありながら、申し訳ない気持ちになる。
「ありがとうございます。しかし、実は次の働き口が決まっていて。それに近々結婚するんです。」
店「…そうか。一緒に働けないのは残念だけど、泰葉ちゃんの幸せを願っているよ。
はい、これが今日の分のお給金だ。」
店長はにこりと笑い、茶封筒を泰葉に差し出した。
「ありがとうございます。忙しかったけど、楽しかったです。」
店「こちらこそ!次はご主人とお客さんとして来ておくれ。」
「はい!」
泰葉は店長に頭を下げて、由梨恵の待つ更衣室へと向かった。
「由梨恵、お待たせ!」
更衣室へと向かうと、そこには誰も居なかった。
「あれ?先に帰ったのかな?」
しかし、由梨恵はそういうタイプではない。
それに今日のことや、これからのことについて喋りたかった筈である。
そこまで広くはない更衣室で、泰葉を驚かせるのに隠れているのだろうか…。
すると、由梨恵の荷物置きの戸が空いていることに気付く。
鞄はそのまま入っている。
「…まさか!!」
その時、『ドンッ』という音が裏口の方から聞こえる。
泰葉は急いでその音のする方へと向かった。