第66章 消失
祐「…なんだ。」
男はそっと近寄り、祐一へと耳打ちする。
その男は先程天元達が追ったと思われるうちの1人だった。
祐「…その女、その女の名前は⁉︎」
『名前…ですか…?』
男が話したのは、今晩の獲物。
その女の特徴が泰葉に当てはまるもので、祐一ももしやと食いついた。
だが、攫う女の名前など聞いているはずもなく。
祐一の質問にたじろぐ男。
その様子に、今はただ1人の女しか頭に無い祐一は苛立ちを隠せない。
祐「名前も把握していないのか!!この役立たずが!!」
『も、申し訳ありません…!!』
男は「いつもは確認などしないくせに」と内心思っていたが、そんなことを言えるはずがない。
祐一自身にはそれほど力はなくとも、媚を売るのがうまい為大変に和誓に気に入られている。
その和誓が怖いのだ。
『すぐに確認を…』
男がそう言うと、祐一はそれを止める動きをみせる。
祐「攫うのは…今夜だな?俺も同行する。その女を確認したい。」
『…わかりました。』
それだけ言って、男はまた姿を消した。
祐一は自然と口元が緩む。
先程までは殺気立たせていた顔が、ニヤニヤとした不気味な笑顔へと変わる。
周りの人達は不審が強まり避けて通っていく。
祐「あぁ、泰葉。きっと僕を待っていてくれたんだね…。」
祐一は舌舐めずりをした。