第66章 消失
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そうして、とうとう日曜日を迎えた。
泰葉はあの後、落ち着いた後はぐっすり眠れた。
杏寿郎に抱きしめられていた安心感もあるのかもしれない。
身支度のため鏡に向かう泰葉に後ろから杏寿郎は話しかける。
杏「泰葉さん、一応聞くが身体には変わりないか?」
「うん。昨日は頭痛がして熱っぽかったけど、今はなんとも。」
杏「そうか。ならば良かった。
だが、体調に異変を感じたらすぐに帰るんだぞ。」
「分かった。なんだかお父さんみたいね…。」
泰葉はクスッと笑うと、杏寿郎は複雑な表情(かお)をした。
杏「お父さんか…。夫から離れてしまったな。」
過保護にしすぎもよくないか…。
そう思いながら鏡を見ると、今日は洋装に身を包む泰葉がいた。
杏「む。今日は洋装なのか?」
「え、そうなの…。向こうも洋装らしいから合わせようかなって。」
本当の理由は制服に着替えなくてはならないからだ。
着物では時間がかかる。
「杏寿郎さんも今日は着流しでいいの?お出かけなのに。」
杏「あ、あぁ。まずは宇髄のところに行って、動きやすい服装に変えるらしいんだ。」
2人とも、若干のぎこちなさを含んでいる。
それを感じ取れない訳ではないが、自分にも隠していることがあるため互いに聞くことができないのだ。
杏(女性と2人で歩くと言っていたが…)
それでも心配してしまう。
何も街で声をかけてくる者だっているのだから。
杏「泰葉さん、ちょっといいか?」
「ん…?えぇ。なぁに?」