第66章 消失
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時同じして、ある倉庫の前。
『へへっ、それなりに集まって来たな…。』
『あぁ、上玉揃いだぜ。けっ、俺も混ぜてもらいてぇもんだ。』
『これは親分のだからなぁ。俺たちはお預けだ。』
『けっ』
扉の前で男2人が愚痴をこぼす。
倉庫の中では男の喋る声と、猫の鳴くような声が微かに聞こえる。
『ほぉ、なかなかだな。』
『はいっ、満足いただけましたでしょうか?』
『ふん、コイツらが俺に歯向かう事なく従順ならばな…』
そう偉そうに言うのは坂本和誓。
杏寿郎達が狙う、今回の騒動の親玉だ。
そして、和誓に言われ目の前に鋭い視線を向けて「分かってるな?」とばかりに睨んでいるのが
『松本ぉ、お前良い歳で独身たぁ…好きな女の1人でも居なかったのか?』
松本と呼ばれた男。
松本祐一。
以前泰葉を付け回し、攫った挙句遊郭に売り飛ばすという気狂いだ。
松本家から見放され、警官に引き渡された彼は相手が泰葉1人だった事、猫を被って真面目に罰をこなしたことにより、役3ヶ月ほどで出所していたのだ。
祐「あ、いや…おりましたが…」
和「おぉ、そいつ。その女連れてこい。」
祐「それは…でも…。」
和「あ゛ぁ?てめぇ、俺に逆らうっつーのか!!」
ドスの効いた怒号が倉庫に響く。
祐一はビクッと大きく身体を震わせ、そんなそんなと頭を振る。
和誓と祐一の目の前に横たわる、手ぬぐいを咥えさせられた女性たちもカタカタと震えた。
和「お前の目の前でその女を可愛がってやらぁ。」
ニヤッと口角を上げて祐一を見ると、踵を返し倉庫を後にする。
和「来週までには連れてこい。
…あと、そいつら躾けておけよぉ〜。」
祐「へ…へい」