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太陽の瞳 【鬼滅の刃】

第64章 焦りと余裕



煉獄家の門が見えて来た。


間もなくこの逢瀬も終わる。



帰り道に今日の夕飯の材料を買った2人は片手に荷物を持ち、もう片方の空いた手は繋がれたまま。





「今日の夕飯は大根のそぼろ煮にしましょう。こんなに立派な大根、買えて良かったわね。」

千「そうですね。柔らかく煮ましょう。」



あと数メートルで家に着く。
千寿郎は相槌を打ちながらも、この時がもう終わってしまうのかと残念に思っていた。



楽しそうに隣を歩く泰葉はなんとも思っていないのだろうか…。
千寿郎は自然と歩みを止めた。



くんっと手が引かれた泰葉は、初めて千寿郎が立ち止まったことに気づく。



「…千寿郎くん?何か買い忘れた?」

千「泰葉さん、少し…僕の話を聞いていただけますか?」



優しい下がり気味の眉が、困った様に下がる。
その様子に泰葉はそっと頷いた。



千「…僕、泰葉さんに出会えて本当に良かったと思っています。」

静かに話し始める千寿郎。
心なしか、緊張が混じった様に震えている。



「うん?ありがとう。私も千寿郎くん達に出会えて良かった。」


泰葉はにこりと笑う。
しかし、自分の名前の後に付けられた"達"。
それを聞いて、千寿郎は震えも止まり自然な笑みが溢れる。



千「兄上はもちろん、僕も泰葉さんが大好きです!
これからも、何かあったら遠慮なく言ってください!」



自分の胸を拳でトンッと叩く千寿郎。



泰葉の中では自分は義弟でしか無い。
それは最初から分かっていた。



泰葉は兄を愛している。



そして、自分たちにも大きな愛情を持ってくれている。



それだけで十分だ。
千寿郎は正直この気持ちが恋愛感情なのか、家族の愛情なのか、憧れか…。
その答えは分からない。




でも、少しだけでも感じた儚く淡い。



千寿郎の小さな恋は、そっと幕を閉じた…。













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