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太陽の瞳 【鬼滅の刃】

第64章 焦りと余裕




正直気が乗らない。
杏寿郎に言わないと…。
彼は許してくれるだろうか。


あの制服を着て愛想を振り撒かなくてはならない。


本当にただ注文を受けて、厨房に伝え、できた料理を運ぶだけ…
それならばなんら問題ないだろう。


しかし、可愛い衣装を着飾り、愛想を振りまき働く女性がまだ物珍しいこの時代。
ちょっかいを出してくる男がいるのも事実。
それが1日に1人ならまだ耐えられるが…。



辺りを見ると、ウェイトレスに声をかける男がちらほら。
きっと、それがしたくて来ているのも多いだろう。


(きっと、いい顔はしないわよね…。)


しかし、友の頼み。
それに店側も来てくれると、期待の眼差しを向けている。

こういうのをスパッと断れたのなら良いのだが。







千「お帰りなさい。お話はもうよろしいのですか?」


千寿郎は良い姿勢のまま小首を傾げる。


「うん。大丈夫よ。」


にこりと笑い、取り敢えず千寿郎にこの話をしておこうか…。
そう思った時。



千「先程からあの男性たちは、働く女性にちょっかいばかりなんです。」



その視線の先には、男性が3名ほど。
寄って集って1人のウェイトレスに声をかけている。



『ねぇ、いくつなの?』
『恋人は…?いる?いるかだけでも教えてよ。』
『よしてやれよ、怯えて可哀想だろう?なぁ、可愛い口して。』



ここで男達を逆撫ですれば、余計に騒ぎが起きる。
ウェイトレスは苦笑いを浮かべるしかできなかった。








千「…もし泰葉さんが、こういう店で働いていたら、僕たちは心配でなりません。」

「え…。ダメかな?」

千「ダメですよ!あんなに言われて触られて…。
兄上だったら即刻連れて帰るでしょうね。」



千寿郎はそう険しい顔で、残りのアイスクリンを口に入れた。



そんな話を聞いて、益々杏寿郎に言えるはずがなくなった。
千寿郎にも話そうかと思ったが、余計な心配をかけたくない。
そして、困った友を見捨てるわけにもいかない。




…これは、黙って行くしかない。





泰葉は、そう心に決めた。




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