第64章 焦りと余裕
「あ!そうだ、千寿郎くんアイスクリン食べていく?
冷たくて美味しいのよ。…寒いけど。」
千「先日お話しされていたやつですね!是非食べたいです!」
パァッと表情を明るくさせる千寿郎の可愛さと言ったら。
由梨恵は、この弟となら喜んで手を繋ぐわ…と納得していた。
由「じゃぁ、席に案内するわ!それから泰葉にも話があるし。」
「話?」
まぁいいからと由梨恵は2人を案内する。
店の真ん中あたりの席に通された。
由「ごめんね、窓際は埋まっちゃってて。」
「ううん、大丈夫。じゃぁアイスクリンをとりあえず2つお願い。」
由「アイスクリン2つね。特別に温かい紅茶も付けるわ。」
そうウインクをして奥へと戻る由梨恵。
寒い日のアイスクリンには紅茶はぴったりだ。
千「紅茶は以前、甘露寺さんから頂きました。香りの良いお茶ですね。」
杏寿郎の継子だった蜜璃は、度々煉獄家を訪れていたそう。
無惨との戦いがあったり、今は何より小芭内と結ばれて幸せの中でも忙しいのだろう。
「また来てくれるといいわね。」
千「…はい!」
由「お待たせしました!」
コト…と置かれた白く丸みを帯びたアイスクリン。
サクランボのシロップ漬けは定番なのか、当然のように鎮座していた。
香りの良い紅茶も置かれる。
冷たいアイスクリンで冷えた体をこれで温めれば言うことはない。
2人は匙で1掬いし、口へと運ぶ。
ひんやり冷たく、甘いアイスクリンはすぐに溶けて液体へと変わっていく。
「んー、美味しい。」
千「ん!んーん、んんん!」
(ん!全部、溶けた!)
「千寿郎くん、飲み込んで大丈夫よ。」
泰葉と由梨恵がクスッと笑うと、千寿郎はごくん、と喉を鳴らした。
千「すごいですね!美味しいです!」
キラキラとした眼差しが眩しい。
か、可愛い…!!!
こんなに喜んでくれるなら、いつでも食べさせてあげたい!!
泰葉と由梨恵はそう心の中で悶えていた。