第64章 焦りと余裕
急に背後から聞こえる声。
皆ビクッと肩を跳ねさせると、声のする方へと向いた。
…しかし誰もいない。
杏「今、確かに…!!」
実「あの声は宇髄だろォ…?」
槇寿郎と義勇は無言で脈を落ち着かせていた。
天「んで?変装してバレなきゃ良いんだな?」
『うわっ!!!』
柄にもなく、大の男4人が驚いた声をあげる。
先程は背後から聞こえた声が、今度は向かい合って座る間から聞こえるのだ。
いつの間にか中心となって茶を啜る天元に周囲は驚きを隠せない。
忍だとは知っていたが、ここまでとは…。
槇「宇髄、君は普通に入ってきなさい。」
天「いや、普通に訪ねようと思ったんだが、なんだか楽しそうな話だったんでな。話の腰を折るような事はしないように来たんだ。」
そう言って笑うが、天元以外は笑えるはずがない。
義「宇髄、俺たちが早死にしたらお前のせいだ。」
天「なんでだよ。痣だろ、痣のせいだよ。」
突然現れた天元は、徐に懐から一枚の紙を出す。
そして、初めからこの件を聞いていたかのように喋り出した。
天「不死川の言う、1人の男ってのは多分コイツだ。
坂本 和誓(さかもと かずちか)。この男が黒幕で間違いねぇ。」
その紙には沢山のいかつい男達の集合写真。
50人ほど居るだろうか。
天元はその最前列の中心。
いかにも親分なのだろうという男を指差す。
槇「…坂本…。また厄介な。」
天「あぁ。相当に用心しねぇと、その後が大変だぜ。」
坂本 和誓。
坂本組の親玉だ。
今で言うヤクザ的な存在。
どうにも治安は悪いと言えそうだ。