第64章 焦りと余裕
義「実は、俺たちが頼まれた案件がある。」
杏「頼まれた案件!なんだ!!」
実「泰葉は街といっても弟といるんだ。
おそらく心配いらねェが。」
そう言って、実弥は深刻な表情へと変わっていく。
その様子に槇寿郎も杏寿郎も穏やかな話ではない事を悟る。
実「ここ数日、街の娘が姿を消してるんだァ。」
杏「噂には聞いている。
しかし……鬼はいないはずだが?」
槇「…人攫いか…?」
義「…そうだと。」
人攫い。
一度、泰葉に執着の強い男が、寝込みを襲い攫って行ったことがある。
あの時、泰葉は心に深い傷を負った。
自分の部屋に入るのが怖くなるほどに。
杏「それは、許せんな。」
杏寿郎は当時のことを思い出し、ぎりっと拳を握る。
槇「だが、なぜ君たちがその任を預かってきたんだ?
警官の仕事であろう?」
槇寿郎の言うことは尤もである。
鬼殺隊は政府に属していない。
産屋敷家に関わるものであったり、依頼であれば断る理由はないが、警官からの頼みに従う義理は持ち合わせていないのだ。
それに、帯刀を巡っては政府や警官は敵。
実弥と義勇は顔を見合わせ、実弥がガシガシと頭を掻く。
実「これがまた、お館様からの依頼なんだよなァ…」
杏「…お館様の?」
義勇は、そうだと頷く。
実弥と義勇の話では、この事件が増えたのが1ヶ月も前だと言う。
狙われるのは街で働く女性。
仕事が終わり、家路に向かう時に姿を消しているらしい。
そして、決まって美人と評判の良い女性ばかりだというから、何か裏で関係してると読める。