第64章 焦りと余裕
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最後はそう送り出したが、とてもじゃないが懐の深い男のすることでは無かった。
そんな格好のつかない自分は隠しておきたい。
槇「まぁ、千寿郎がまさかあんな事を言うとはな…。」
杏「はは。それは俺も同感です。」
槇「いつまでも子供じゃないか…。どれ、杏寿郎。少し手合わせするか。」
杏「…はいっ!」
槇寿郎は杏寿郎の複雑な心情を粗方見抜いている。
血は争えない。
杏寿郎と千寿郎もだが、槇寿郎にも理解できるものだった。
自分の子供でもおかしくない歳の娘に恋をすることさえないが、泰葉の真っ直ぐで明るい性格には好感しかない。
そしてあの笑顔を向けられれば煉獄家の男はこうなるだろうと、自分をはじめそう思う。
槇「はは。」
槇寿郎は道場に入る前に、思わず声に出して笑ってしまった。
杏「む。どうしましたか!」
槇「いや、なんでもない。血は争えん。
…そう思っただけだ。」
杏寿郎は父の考えたことは分からなかったが、おおよそ泰葉の事だろうとは予想ができた。
杏「…皆、煉獄家ですからね!!」