第63章 勝負の時
天「仕方ねぇなぁ!可愛い千寿郎に言われちゃ、見せないわけにはいかないってもんよ。
特別に、お前の魚を獲ってやろう!天元様が、派手にな!!」
千寿郎の肩にポンと手を置き、鼻高々に言い放った。
千「本当ですか!!優しいですね!素敵です!!」
千寿郎にベタ褒めにされ、気を良くした天元は火薬玉を手に取り投げ込む準備をした。
天「弾けるから少し離れてろ!」
そう言うや否や、バチバチバチ!!っと大きな音を立てて、辺りには一時煙が立ち籠めた。
風に煙が流され、また澄んだ川が見えると、プカッ、プカッと魚達が腹を見せるようにして浮いてくる。
千「す、凄い…!!本当に魚達が…!!」
天「まぁな。これくらいは簡単なもんだ。」
千「生き…てるんですよね?」
天「気絶してるだけだ。早くしねぇと起きるぞ。」
ホレ。と網を渡された千寿郎は急いで浮いている魚を掬い上げた。
千「本当にいただいて良いのですか?」
魚籠いっぱいに入った魚達を見ながら、千寿郎が尋ねる。
天「良いって良いって。持っていきな。
俺はまた同じことをやりゃぁ、大量の魚が手に入るんだからな。」
「千坊のように地道に頑張ってる奴には、このくらいの足枷してやらねーと、不平等だろ。」
千「本当にありがとうございます!」
千寿郎がペコリと頭を下げて、また下流の方へと戻っていく。
よほど嬉しかったのか、駆け足で去っていった。
天「あんなにはしゃいじゃって。
かわいーねー」
さてと。と、天元はまた少し上流の方へ移動することにした。
この辺の魚は大体取ってしまったし、魚も警戒しているだろう。
次の目ぼしい場所に荷物を置き、天元はまた火薬玉に手を伸ばそうとした時
『カァー!!!』
と、長年連れ添った相棒の声が響いた。
天「…まじか。」